神埼市千代田町城田託田西分 吉田ムラさん(明43生)

 むかし、むかしたいね、

あるところに、

とても金持ちのお婆さんがいらっしゃいました。

ところが、そのお婆さんは、とても話好きで、

「お話を、『もう聞かんでよか』ちゅうまで

言わせた者(もん)に、我が財産ば、全部あぐっ」

と言われたそうです。

そうしたら、山からや海からまでも沢山の人が来て、

お婆さんに話をするけれど、誰も、お婆さんに、

「聞きあいた」と言わせる者は一人もいなかったそうです。

ところが、ある時、ひょっと、

男か女(おなご)が分からないけれど、

訪ねてきた人がいたそうです。

それで、その人にも、話をさせたら、

「せいは根も食う、葉も食う、白根も食う。

のう婆さん」と、それだけを、

もう朝から晩まで、ずーっと言い続けるそうです。

そいぎ、お婆さんのね、

「もう、その話は聞きあいた」と言われて、

そうして、

「もう、ほんに【本当に】、『聞きあいた』

なんて言うことは無かろうて、思うとったばってん」

と言われて、とても悔しがられたそうです。

(出典 千代田の民話 P105)

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