神埼市千代田町姉 吉岡ナオさん(明31生)

  叔父さんが大学時代、お友達と山に登ったそうです。

猫嶽山という山にですね。

そうしたら、山の中で道に迷ってしまって、

家は一軒もないし、夜通しウロウロしていたら、

遠くに、赤い灯が見えるので、それを頼りに行ったら、

小さな小屋があって、そこに、年取ったお爺さんが、

囲炉裏の端で、大きなキセルで煙草を、スッパスッパ吸いておられたそうです。

それで、

「道に迷うて泊まるとこのなかけん、泊めさせてください」と頼んだそうです。

そうしたら、

「そいない、あがれ」と言って、家に入れてくれたそうです。

そうして、お茶を出してくれて、色々と本当にもてなしてくれたそうです。

そうして、休む時になって、そのお爺さんが叔父さんの友達に、

「私は、唐津の料亭に飼われていた猫です。

そん時、まな板にあった刺身を食べたとを見つかって、

もう半殺しの目にあって死ぬかと思っていたら、

そこの家の坊ちゃんが私を助けてくれました。その時のぼっちゃんがあなたです」

と言われたそうです。

叔父さんは、その話をして、私たちに、

「だから、猫をいじめたらでけん。猫でも恩を知っとるから」

と言っていました。 

(出典 千代田の民話 P111

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