蟹の恩返し 作:花山院路子

蟹の恩返し 作:花山院路子

神埼市千代田町境野東野ヶ里 副島寅二さん(明38生)

  むかし、蟹が子供に捕まって、

殺されようとしていたところに、お爺さんが通りかかって、

「助けてやらんかぁ」と頼んだそうです。                                                                                        

そうしたら、子供が

「いやばい」と言うので、

「そいない、おい【俺】が買おうだい」と言って、金を出して買って、

「お前達、もう二度と、ここんたいさい来っぎでけんぞ、

また、捕まって酷い目にあうけん、はよ【早く】逃げろ」と言って、

逃がしてやられたそうです。

そいから、また、行きよったら、今度は、

蛇が蟹を呑もうでしていたので、蛇に、

「おい、蛇どん、蟹を助けてやってくれ。

おい【俺】がうまご【孫】の四つじゃい、五つじゃいなっとのおっけん、

そいが娘になった時ぃ、お前の嫁にくるっけん、そいけん、助けてやってくれ」

と言ったそうです。

そうしたら、蛇が蟹を呑まないで、スーッとどこかに行ったそうです。

そうした、その娘が年頃になった時、

夜な夜な、その娘のところに、青年が通ってきよったそうです。

そうしたら、お爺さんが、ありゃぁ、あの蛇が青年に化けて来よっばいにゃあ、

と思って、蛇が怖がる方法が何かないだろうかと考えて、

南妙法蓮華経か何かの念仏を一心に夜通し唱えさせたそうです。

そうしたら、夜中に嵐になって、外で恐ろしい音がするそうです。

そうして、しばらく続いた後、ピタっと消えたそうです。

明くる朝、起きて見たら、家の周りに蟹が何百匹も死んでいたそうです。

そうして、その側には、大蛇が死んでいたそうです。

それで、

「あの蛇が青年に化けて来よったとば、

あの蟹がうちの娘ば助けてくいたばいにゃあ」と言って、

祀ったお寺が干満寺と言うそうです。

 (出典 千代田の民話 P18

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