神埼市千代田町境野下西 黒田ウメコさん(大15生)

  むかし、あるところに、

大変歌詠みの好きな和尚さんが住んでいたそうです。

村人は分からないことがあると、

歌にして聞きに行くと教えてくれました。

ある時、若者が一人で道を歩いていると、立て札を見つけました。

その立て札には、歌が書いてあったそうです。

そうして立て札の裏には、

歌の意味が解けた者は、家の聟とする、と書いてあったそうです。

若者は、歌の意味が分からないので、

急いでお寺の和尚さんに聞きにいきました。

「今晩は、和尚さん。一つ、歌を詠みましょう」と、

若者が言うと和尚さんは喜んで、早速始めることになりました。

まず、若者が

「商売は十五夜の月」と言うと、和尚さんが、

「餅やか、餅やか」と言われたそうです。

次に、

「祈り申さば、千年腐らぬ橋の下」と言うと、

「大石橋のことなれば」と、

「お名を申さば、夏、秋かけて鳴く虫か」と言うと、

「おせび【セミ】殿か、おせび殿か」と言われたそうです。

若者は、立て札の歌の意味がわかりましたので、

和尚さんに礼を言って、急いで、大石橋のたもとにある餅やに行ったそうです。

そうして、おせびさんという名前の娘さんと結婚し、

仲良く暮らしたということです。 

(出典 千代田の民話 P30

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