神埼市千代田町境野上黒井 黒田ヨネさん(明21生)

  むかぁし、

あるところのふうけもん【愚か者】がヨメゴ【嫁】もったそうです。

それで、昔は、ミツメちゅうて、

一緒に三日目にヨメゴ【嫁】の里に行きよったそうですが、

ふうけもん【者】は、一人で行きんさったそうです。

そうしたら、里で、みつめだんご、というのを食べさせてもろうて、

本当に、その団子が美味しかったそうです。

それで、

こりゃぁ、いっちょう、家に帰ってから、

ヨメゴ【嫁】につくってもらおう、と思って、忘れないように、

「ダンゴ、ダンゴ、ダンゴ」と言って帰ってきよったそうです。

 ところが、途中に水口のあったそうです。

 それで、その水口を跳んで越えようとして、

「エントコ」と言って、跳び越えなったそうです。

そうしたら、その後は、ダンゴがエントコになって、家に帰るまでズーッと

「エントコ、エントコ、エントコ」と言って帰りなったそうです。

 そうして、帰ってきた翌日、嫁さんに、

「エントコばして、食わせんかぁ」と言うので、

「エントコち、何のことじゃい」と、嫁さんが聞いたら、

「エントコて、エントコくしゃぁ」と言うけれども、

「エントコち、あたしぁ【私は】知らん」と言うので、

「知らんことの、あんもんかぁ【知らないことはないやろが】」と言って、

火吹きだけで頭を叩いたので、腫れたそうです。

それで、

「よそわしか、ダゴのごと腫れた」と言ったら、

「あぁ、そのダンゴ、ダンゴ」と言われたそうです。 

(出典 千代田の民話 P95 

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