神埼市千代田町境野東野ヶ里 副島寅二さん(明38生)

  むかし、ある所で、

お腹の大きくなった嫁さんが亡くなったそうです。

 ところが、お腹の中の子供は出さずに土葬をしたところ、

そのあくる日からですね、浴衣がけの、

帷子一枚来た女が、墓から出てくっそうです。

 そうして、飴方屋さん行たて、一銭やって、

飴方を一本ずつ買っていくそうです。

 いつも夕方に来て、風が吹くと、

フワッして揺れるそうで、飴方屋さんは、

おかしかねぇ、と思っていたそうです。

そうしたら、お寺の和尚さんが、墓場の方から、

赤子の鳴き声の聞こえるので、おかしかねぇ、と思って、

行ってみたら、お腹の大きくなった女の人を埋めた墓に、

小さい穴の空いていて、その穴の中から聞こえてきたそうです。

 それで、

「あぁ、こりゃぁ、子供は出さんで埋めたけん、

お墓の中で子供の生まれとっとばい」と言って、

早速、人を集めて、墓を掘ってみたら、

死んだお母さんの胸にすがって、子供が泣きよったそうです。

 それで、子供を取り上げて、そこの土地の人が育てて、

その子供は立派な人になったそうです。

 昔は、お墓に埋める時は、六文銭か七文銭か、

必ず入れるようになっとった。

今は、火葬でそんなことはしないけど、昔は、そのようにしていたよ。

穴の空いたお金を墓に入れよった。

 そのお金で、飴方を買いに来ていたそうです。 

(出典 千代田の民話 P19

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