神埼市神埼町利田 納富ミヨさん(22)

  あの人はね、ほんに親孝行じゃったてっちゃんね。

そしたぎぃ、お母(か)さんが病気してね、

「竹の子食べたい」ち、言いなさったて。

そいばってんが、寒(かん)のうちけんね、

「今頃は竹の子はなかろう」ち。

「そいばってん、ほんに竹の子ば食べたか」ちて、言いんさったて。

そいぎにゃ、その息子がね、お母さんのこぎゃん[このように]言いんさっけんが、

「竹の子ば何処(どこ)なっとん見だして歩いて歩(そう)つきよったら、

何処(どけ)かひょっと出てはおらんじやんじゃうか」ち言(ゆ)うてね。

あぎゃん[あのようにして]と、鍬(くわ)持って山ば見て歩つきよんさったぎね。

そいぎぃ、竹の子の出とったちて。

そいば持って来て食べさせんさったち。

そいぎい、お母さんの喜びんさったちてね、

言う話を聞きよったけん。

竹の子掘りばかいじゃなしね、二十四通りもね、孝行ばしとんさっち。

〔大成 補遺四 孟宗竹 (AT四〇三B、四八〇) 

(出典 吉野ケ里の民話 P220)

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