神埼市神埼町蔵戸 太田芳雄さん(38)

 餅好きな和尚がおったて。

小僧に食わぜじい〔食わせず〕、和尚ばっかい食いよったて。

ある日、和尚が留守の時に小僧が〔餅〕食ってしもうとった。

そいで小僧は、

「私や食わん」ち。「わが食わじ誰が食うきゃあ〔かあ〕」ち。

「そいばってんが、あんたあ、幾ら食うとらんて、

あんたの食うとっち〔食ってると〕言うたっちゃ〔言っても〕、

俺(お)どま知らん。そいばってんが、寺(うち)の裏の地蔵が食(き)いよったあ。

地蔵がもう、俺がこの頃行たぎにゃもう、

ムシャンムシャンいわして食いよったけんが、地蔵に違いなかよ。

俺どま食うとらんよ、和尚さん」ち。

「そんない地蔵さんの所(とけ)ぇ行たてんのう」ち。

そうしたいば、地蔵さんの口端(べち)やあ何(ない)かの線のこうちいとったち。

「そーうら、わが、俺(おや)、小僧ばかい言いよっとけえ、わが〔じぞうが〕食うとったかあ。

俺、また食おうで楽しゆうどつとこれぇ〔楽しんでいるところに〕。こん畜生(ちくしょう)」

て、和尚さんの地蔵さんば濠(ほい)の中(なき)ゃあ、ザブーッと、ほたくい〔放り〕投げなったて。

「くうた。くうた。くうた」ち言(ゆ)うて。

そいぎい、ばあっきゃあ。 

〔大成 五三五 餅は本尊様〕

 (出典 吉野ケ里の民話 P179)

標準語版 TOPへ