神埼市神埼町四丁目 米光輝次さん(26)

 むかしむかしのことで。

ちょっとお寺に小僧さんがおって、朝もお粥(かい)、昼もお粥、そいから晩もお粥、

もう、日に三度お粥でその、ちょっと性根がなかもんでからなあ。

そいで、小僧さんが、その何とか言(ゆ)うて、仏さんの後ろの方に隠れとってですね。

朝、お務めしよって〔していて〕、

「和尚、和尚。何だ、朝もお粥、昼もお粥、晩もお粥、三回では性根がないそ。飛ぶぞ」

て、こう言うて、そのお坊さんが、仏さんがそげん言いないよっと思うてなたあ、

食べさすっごと〔食べさせるように〕ないなった〔なられた〕て言う話たんたあ〔ですね〕。

そいで、こいでよかったと。

そいから、ある時、今度あ、あるところの小僧さんとその、

こう〔このように〕出会(でお)うたもようたい。

ところがその、やっぱい食(き)い物(もん)の話が出て、小僧は、

「寺もその、朝・昼・晩、お粥ばっかい〔ばかり〕で性根のなかけん〔ないから〕、

そいで、ぎゃんしたぼう〔このようにしたぞ〕。そいで、そのご飯ば食べさすっごとないなったて」

そいぎい、その小僧さんも、ぎゃんして〔このようにして〕務めないよつとこれぇ、〔務められてるところで〕

「こら、こら、和尚。朝も粥、昼も粥、晩も粥、性根ないそ。飛ぶぞ」て、こうやって、

その、余(あんまい)いちい飛んだらしかたんたあ。

そいぎい、

「こら」ち言う、和尚さんの。

そうしたところが、和尚さん同志、ある時その、出会うてその話が出たらしかたんたあ。

そいで、

「そんない〔それなら〕寺(うち)んとも小僧から騙された」と、そう言う風になって、

とうとう、お粥ばかいちなったて。

そいで、ちょっとばっきゃ【それでおしまい】。 

〔大成 五四二 和尚を威す(cf.一五六九*、一五七二E)

 (出典 吉野ケ里の民話 P176)

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