神埼市神埼町四丁目 米光輝次さん(26)

  お寺はちょっと、貰いよったですからなた。

そいで、小僧さんにゃ食べさせじその、

自分がやっぱい食べよったらしかたい。

そいで、餅焼いて食(た)びゅうと思うとんもんじゃい、その小僧さんにも、

「西ん辺(にき)その、あぎゃんとで、馬のちん逃げとっ。そいば見てこい」

ちて、小僧さんば追いやって。

やっぱい火鉢小(こう)まかあの、そいばこう焼いて食べよった。

そうしたところが、行たてみたところがなあぎゃんとの、

そぎゃな馬の逃げたいないたい〔など〕してもおらんもんじゃい、

ありや、こりゃ騙されとっと思うて、帰って来(く)ったい。

ところが、和尚さんが、もう、ありゃ帰って来たもんたい、と思うて、

灰を被(かぶ)せても臭いがすんもんじゃ小僧さんが、金火箸ば握って、

「馬はこの横土手(でえ)ば、こう逃げて、こう逃げたばんたあ」ちて、言(ゆ)うて、

灰でその火鉢ば、こうこやったち。

「ああ、餅のあった」ち。

そいで、自分がちい食べてた。

「また、こうこう、こっちからこったい〔こっち逃げた」ち。

あぎゃん〔そのように〕してその小僧さんが食べてしまうち言う話たんた。

そいばっきゃあ【それでおしまい】。 

 〔大成 五三三 焼餅和尚〕

 (出典 吉野ケ里の民話 P171)

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