神埼市神埼町四丁目 米光輝次さん(明26生)
お寺はちょっと、貰いよったですからなた。
そいで、小僧さんにゃ食べさせじその、
自分がやっぱい食べよったらしかたい。
そいで、餅焼いて食(た)びゅうと思うとんもんじゃい、その小僧さんにも、
「西ん辺(にき)その、あぎゃんとで、馬のちん逃げとっ。そいば見てこい」
ちて、小僧さんば追いやって。
やっぱい火鉢小(こう)まかあの、そいばこう焼いて食べよった。
そうしたところが、行たてみたところがなあぎゃんとの、
そぎゃな馬の逃げたいないたい〔など〕してもおらんもんじゃい、
ありや、こりゃ騙されとっと思うて、帰って来(く)ったい。
ところが、和尚さんが、もう、ありゃ帰って来たもんたい、と思うて、
灰を被(かぶ)せても臭いがすんもんじゃ小僧さんが、金火箸ば握って、
「馬はこの横土手(でえ)ば、こう逃げて、こう逃げたばんたあ」ちて、言(ゆ)うて、
灰でその火鉢ば、こうこやったち。
「ああ、餅のあった」ち。
そいで、自分がちい食べてた。
「また、こうこう、こっちからこったい〔こっち逃げた」ち。
あぎゃん〔そのように〕してその小僧さんが食べてしまうち言う話たんた。
そいばっきゃあ【それでおしまい】。
〔大成 五三三 焼餅和尚〕
(出典 吉野ケ里の民話 P171)
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