神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(明34生)
ほんになた、仲よか友だちの二人(ふたい)くさんた、
仲のよか友だちの二人、墓所に行たてくさんた。
そうして石塔に腰掛けてなた、話しなっとがもう、
「ほんに俺(おい)とあさん〔お前〕は切っても切れん、その、友だちて。
そいけんがその、もうどぎゃん〔どんなに〕苦しみのあったっちゃい〔あっても〕
助け合(お)うて、そうして行かんばでけん〔行かねばならん〕」て。
「そいけんがそいば約束しゅう」て言うて、石塔に腰掛けながら、
その、話しよんさったてじゃっかんた、ニ人。
「うん、ほんなこてぞ〔本当だぞ〕、ぎゃんくさい〔こんなにさ〕、
友だちゃあ、俺とあさんは切っても切れん友かなきゃだちじゃいけんがら、
嬉しか時も悲しか時も助け合うて行かやこて〔行かなきゃ〕」て、
お互いの話のまとまったて。
そいぎとないば、ひとりの友だちの言うことにゃ、
「あのくさんた〔あのですね〕、そいないばくさ〔それならばさ〕、
今俺がこの足ばばんた〔ですね〕冷たか手ばいっちょう〔ひとつ〕はじいてくれんか」て、
頼(たの)うだところが、その友だちが今、約束しとってくさんたあ、
一目散に、ちい逃げたもようたんた。
いよいよ土壇場になっぎぃ、わが身よいか可愛いかもんななかばんた〔ないですよ〕。
〔本格昔話その他〕
(出典 吉野ケ里の民話 P111)
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