神埼市神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(34)

  ほんになた、仲よか友だちの二人(ふたい)くさんた、

仲のよか友だちの二人、墓所に行たてくさんた。

そうして石塔に腰掛けてなた、話しなっとがもう、

「ほんに俺(おい)とあさん〔お前〕は切っても切れん、その、友だちて。

そいけんがその、もうどぎゃん〔どんなに〕苦しみのあったっちゃい〔あっても〕

助け合(お)うて、そうして行かんばでけん〔行かねばならん〕」て。

「そいけんがそいば約束しゅう」て言うて、石塔に腰掛けながら、

その、話しよんさったてじゃっかんた、ニ人。

「うん、ほんなこてぞ〔本当だぞ〕、ぎゃんくさい〔こんなにさ〕、

友だちゃあ、俺とあさんは切っても切れん友かなきゃだちじゃいけんがら、

嬉しか時も悲しか時も助け合うて行かやこて〔行かなきゃ〕」て、

お互いの話のまとまったて。

そいぎとないば、ひとりの友だちの言うことにゃ、

「あのくさんた〔あのですね〕、そいないばくさ〔それならばさ〕、

今俺がこの足ばばんた〔ですね〕冷たか手ばいっちょう〔ひとつ〕はじいてくれんか」て、

頼(たの)うだところが、その友だちが今、約束しとってくさんたあ、

一目散に、ちい逃げたもようたんた。

いよいよ土壇場になっぎぃ、わが身よいか可愛いかもんななかばんた〔ないですよ〕。

〔本格昔話その他〕 

(出典 吉野ケ里の民話 P111)

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