神埼市神埼町戸井土 田中ミヨさん(42)

  棚から入って来(き)よったて。

そいぎい、入って来(く)っ時やあその、

大蛇の姿で来っばってん、家の中に入って来っ時ゃあ、

りっぱな男になって来って。そいぎい、

「そいば捕まえじにゃ〔つかまえなきゃや〕ならん」ち言うて、

お母(か)さんの、この窓に全部(すっぱい)針ば立ててやったて。

そいぎい、その針に抜かって死んどったて。

そいぎぃ、その娘さんにやっぱい関係しとったやろう。

その蛇(くちなわ)の子ば持って。そいぎい、

「桃ば浮かびゃあらきゃあて〔浮かべて〕、こや、生みきらん時ゃあ、

この桃ば、桃の花びらば浮からびゃあて、酒ば飲め」て。

そいが教(おそ)えとったて、男が。

そいぎい、そがんして飲みんさったぎい、あの、

「生む時やあ盥(たらい)の中で生め」て、ちなた。

そいぎい、そいが飲うで、盥の中、こうして、もう、

こう出てきたてたんたあ。

そいけん、女(おなご)は絶対、あの、どうでん桃酒は飲まんばばんて。 

〔大成 一〇一A 蛇聟入・苧環型 (AT四二五A、四三三A)

(出典 吉野ケ里の民話 P42 )

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