神埼町石井ヶ里 石松ノブさん(明34生)
あのう、嫁くさんはなた、呼びんしゃったところが、
もう姑お母(か)さんと二人(ふたい)、
五反、田圃(たんぼ)さい、田の草取いや行きなったてぇ。
ちゃんと懐中(ふところなき)ゃあ入れて行たといなっと思いよったんたあ。
そいぎい、絨椴(じゅたん)の草ば二人して取ろうでなたあ。
そいで、十二時になっても、
そのお母さんがあがい(あがり)なかってっちやん。
そいぎい、嫁くさんは空腹(ひだる)うしてたまらんてぇ。
あがいなかもんなたあ。
わが握い飯(めし)ば持って行たといなんもんじゃい。
そいば田の草取っとっ【取っている】嫁くさんに隠れて食べないよんもんじゃい、
何(なん)の行きんさろうかなたあ。
そいぎにゃあと、もう嫁くさんな空腹うしてたまらじい、
「あがろう」て、言いなっばってん、
わが一人(ひとい)腹一杯(いっぴゃあ)なって、上がいなかもんじゃい。
嫁くさんのその、鳥になってくさんたあ、その、
「あがろうボン」ちて、言うて。
その嫁くさんのなたあ。
そいからその、ポンポン鳥は嫁くさんのそがん【そのように】して、
空腹さ堪(こら)えて、
「あがろうボン」て、はしゃぎなったけん、ポンポン鳥はおったんたあ。
そいばっきゃあ。
〔大成 五四 時鳥と継母〕類話
(出典 吉野ケ里の民話 P35 )