神埼市神埼町山田 西久保甚吾さん(明17生)

 むかし。

曇ぎにゃあ、蛙が鳴くじゃん。

そいぎにゃあ、

「もう、蛙のあぎゃん(あのように)と出たけん、雨の降ったじゃあ(ぞー)」

ち言うごたふうで。

そいが〔それで〕、蛙が親不孝しとったもんじゃいなた。

そいもんじゃい〔それだから〕、ちょっとそがん〔そのように〕して、

親不孝ばすんもんじゃい、蛙ば、死んだもんじゃいなた、

親蛙が死んだもんじゃい、ちょっと葬式じゃなかばってん、

ちょっと埋(い)けてな。俺(おい)が死んないば、

こや〔子蛙〕親不孝者じやつけ〔だから〕んが

山(やみ)ゃあ埋けうち言うたら海埋く。

海埋けうち言うたこんな〔ならば〕、山に埋く、

ち言うたふうで、思うたじゃろうなた。

そいで、じき【すぐ】その、あぎゃんとの〔子蛙〕、

人の言うこと、親が言うごと聞いて、今度(こんだ)あ、

その海埋けうと言うたもんじゃい、海、ちょっと埋けじゃあ〔埋めなければ〕。

と思うとった。

そうしたところが、今度あ、ほんなこてえ〔本当に〕、

死んでみたとが、そいが川端埋くんなち言うとったとば、

親の言うこと、今度なっとん聞かじいにゃあ〔くらいは聞かなければ〕

と思うて、埋けとったち言うたんたあ。

そいぎにゃあ、その、親の埋けとんもんじゃいなた、

曇ってくっぎい〔きたら〕、「流る」ち、鳴く。

そいばっきゃあ。

〔大成 四八 鳶不孝〕

(出典 吉野ケ里の民話 P33 )

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