埼市神埼町利田 納富ミヨさん(明22生)

 むかしね。

お爺さんとお婆さんがおんさったでしょうね。

そしたら、

「何が怖(え)すか、かいが〔これが〕怖すか」ち、

言いよんさったてっちゃんね。そいぎともう、

「なんにも怖すかばってん、その、いちばん怖すかとは

古家(え)の漏いがいちばん怖すか」ちて、

言いよんさった、ち言う話じゃんね。

そしたら、

「『古家の漏い』ち言うぎい、何じやろかあ」ちて、

聞いたぎね、もう、古家にかごうどったらもう、雨の降ったらね、

家のしょっちゅう漏ってっちゃんね。

そいぎい、おい所【おいどこ】のなかけんが、そぎゃん言いんさった、

ち言うお話は聞いとったばんたあ。

「狐てん、狸てんな怖(え)ずうなかばってんね、

古家の漏いがいちばん怖すかあ」ちて、言いんさったて。

〔大成 三三A 古屋の漏 (AT一七七)〕

(出典 吉野ケ里の民話 P27 )

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