神埼市神埼町駅ヶ里 荒木常市さん(明28生)

 牛が一匹のうなった【なくなった】と。

そうしたところが、その与太すい者(もん)が通ったぎと、

こい【こいつ】が、盗(と)ったろうち言(ゆ)うごたふうで、

咎(とが)めらいて。

そして、そいが、

「私や、こうしてその、修業しよる歌詠み」て。

「私や、そがな【そんな】ことは絶対しとらん」て。

「そいじゃ【それじゃ】、お前は歌詠みないば、

絶対盗っとらんちゅう【盗っていない】ことば、歌で詠んでみろ」

ちゅうごたふうに言わしたて。

ところがそいがその、

子・丑・寅(ね・うし・とら)の、この十二支なた【です】。

あいで【それで】歌詠うだとば聞いとった。

とにかく、牛ば盗っとらんちゅう意味を

そいで【それで】表わしたもんなた。

ねうしとらとらざる牛をとりとして、

とにかく歌を詠み込うで、牛ば盗っとらんち言うことば、

言わんばらんとば【言わなければならないのを】、あの聞いとった。

[大成一二 十二支の由来 (AT二七五)]類話

(出典 吉野ケ里の民話 P13)

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