神埼市神埼町四丁目 末次輝次さん(年齢不詳)

 むかし、むかし。

あるところのお寺に和尚さんと小僧さんが住んでいた。

和尚さんは朝もお粥、昼もお粥、晩もお粥というふうで、

日に三度お粥ばかり小僧さんに食べさせていた。

小僧さんは、なんとかしてご飯を食べたいものだから、

ある朝、和尚さんがおつとめしているときに、

仏さまのうしろの方に隠れて、

「和尚、和尚。なんだおまえは、朝もお粥、昼もお粥、晩もお粥。

三回のお粥では元気がないぞ。飛ぶぞ!」と言った。

和尚さんは、小僧が言ったとは知らなかった。

仏さまがおっしゃったとばかり思い込んで、

それからはご飯を食べさせるようになった。

あるとき、その小僧さんはある小僧さんと道で出会った。

そのとき、やはり食べ物の話が出て、その小僧さんは、

「うちの寺も、朝・昼・晩とお粥ばっかりで元気のなかったけん、

仏さんのうしろに隠れて、おつとめのときに、

『和尚、和尚。なんだおまえは、日に三度のお粥では元気がないぞ。飛ぶぞ!』

と、仏さんが言われたようにだましたら、ご飯ば食べさすっごとないなった」

と、出会った小僧さんに教えた。

よいことを教えてもらったと思った小僧も、

ある朝、和尚さんのおつとめのときに、

「こら、こら。和尚、なんだおまえは、朝もお粥、昼もお粥、晩もお粥。

三回のお粥では元気がないぞ。飛ぶぞ!」と言った。

ところが余り飛んでしまったので、和尚さんから、

「こら!」と、どなりつけられた。

そして、ご飯を食べさせてもらうどころではなかった。

そんなことがあってからのある日、和尚さん同士が出会った。

そのとき、お粥の話がでて、

「それならうちの小僧からだまされたわい」と、和尚さんは気づいた。

それからは再び和尚さんはお粥を食べさせるようになった。

それで、ばあっきゃ【それでおしまい】。

(出典 佐賀の民話第一集 P82)

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