唐津市鎮西町松島 中尾義高さん(明37生)

 まあ、海トンボ、やっぱいガワ太郎て、

こっちは言いよったですもんね。

良か女(おなご)とか言うて、昔はそんな物もおったんじゃないですかね。

この婆ちゃんから聞きよったんえすが、海岸にその、舟をつけて、

上がって寒(さぶ)いから焚き火をしてその、

火に当たっとるという場合にその、

「自分も温(ぬく)めてくれんか」と言ってその、遊びに来ると。

それは人を取って食うて。そいでその、

それは現に松島(唐津市鎮西町)であったものか、知らんけれども、

呼子の綱張り舟がですね、綱張りに来て、向こうの松島の東の側の方に、

上がってそういうことをしとったと。

しておったところがその、良か女(おなご)が出てきてその、

焚き火たいて当たったところが、

「自分も温(ぬく)めてくれ」と言うて来て、

さあ、それを二人がどうしてここを逃げるかということで、

工夫して、とにかく、

「舟に魚(さかな)ば置いとる」て。

「舟に魚ば置いとるけん、取ってきて食わせてやろうか」と。

こんなふうなことでですね、そいでその、舟に乗って、

そしてその二人(ふたい)はとも縄をもう、くくる暇はないから、

切れ物で切って、碇綱をたぐって、その舟で出て、出た時にその、

「ああ、残念」と言うてその、声を叫(おら)ばれたという話は聞いとります。

〔その他〕

(出典 未発刊)

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