唐津市呼子町小川島 吉川武義さん(年齢不詳)
勘右衛門さんは、青年宿でドジョウ汁を煮ていることを聞いていた。
そこへ自分も仲間に入れてもらうために、
豆腐を一切れ持って行って、戸口のところで、
「熱、熱、熱」と叫んだ。
青年どもは、いかにも熱い物を持って来ていると思って、
びっくりしながら戸口を開けた。すると勘右衛門は、
「おれもドジョウ汁の仲間に入れてくいろ。
おれは豆腐を買うてきとる」
と言いながら、豆腐を鍋の中に入れた。
ドジョウは熱いから、豆腐の中にはいり込んでしまった。
勘右衛門は煮えたころをみはからって、
「おれは、豆腐一切れだったから、豆腐だけもろうて帰ろう」
と言うと、
「そんならもう、そうしてやんなさい」
と、青年の仲間の一人が言った。
勘右衛門は豆腐の中にはいり込んだドジョウを持って帰った。
青年どもがドジョウ汁を食べようとしたときは、
もう一匹のドジョウもはいってなかった。
勘右衛門はそんなにずる賢かったとさ。
(出典 佐賀の民話第一集 P204)