唐津市相知町伊岐佐上 能隅 進さん(年齢不詳)

 ある人が隠れ箕(みの)を持っていた。

ある日、勘右衛門は唐津の虹の松原を通りかかっていた。

すると、ある人が隠れ箕(みの)を着て、松の木に登って、

「おい、おい。勘右衛門」と言った。

勘右衛門は、どこから自分を呼んでいるかわからず、

辺りを見まわしながら、

「お前は、どこにおるか。おまえは、どぎゃんして姿ば隠したか」と言った。

ある人は、

「俺は、隠れ箕(みの)ちゅうとば持っちょっけんで、

お前は、わかんみゃあもん」と勘右衛門に言った。

勘右衛門は、その隠れ箕(みの)が欲しくなった。

次の日、勘右衛門は籾(もみ)おろしを持って虹の松原へ行った。

すると、勘右衛門はある人に出会ったので、

「お前は松の木の上におろうが」と、ある人に言った。

そして、勘右衛門は、

「俺は、隠れ箕(みの)を着ている者でも見ゆるこたっ道具を持っちょっけんで、

お前のおるところはわかる」と言った。

ある人は、

「だぁ、俺にも見せてくれ」と言った。

勘右衛門は籾おろしを見せながら、

「籾おろしで、こうして見っぎ、穴の開いちょるもんで、

目ン玉をたいそう持っちょるごとなっけんで、どこでん見ゆっ」と言った。

ある人は、

「お前に隠れ箕(みの)ば貸すけんで着てみろ。

俺が籾おろしで見るけんで」と言った。

二人は隠れ箕(みの)と籾おろしと交換した。

ある人は、籾おろしで見たけれども、

隠れ箕(みの)を来た勘右衛門を見ることは出来なかった。

勘右衛門は、うまくいったと思いながら

隠れ箕(みの)を着て逃げてしまった。

 

(出典 佐賀の民話2集 P176)

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