唐津市相知町伊岐佐上 能隅 進さん(年齢不詳)

 あるところに、ふうけ息子が住んでおった。

ある日、親父さんが、ふうけ息子に、

「薬(くすい)ば買うて来い」と言った。

ふうけ息子は、「薬、薬」と思って買いに行っていた。

ところが、ふうけ息子は、

薬じゃろい(だろうか)、六(ろく)すいじゃろい、

七(ひっ)すいじゃい、何すいじゃったか、

いろいろと考えてみたが、思い出すことが出来なかった。

「一(いっ)すい、二(に)すい、三(さん)すい、四(よ)すい、

五(ご)すい、六(ろく)すい、七(ひっ)すい、八(や)すい。

やすいじゃった」と、ふうけ息子はひとり言を言った。

ふうけ息子は、金物屋へ行き、やすりを買って家へ戻った。

すると、親父さんは、ふうけ息子に、

「ばか。『薬(くすい)買うて来い』て、言うちょったろうがぁ」と言った。

ふうけ息子は、

「あぁ、こりゃあしもうたどん。

いっすい間違っとっどま、【ひとつ間違えていても】良かろうもん」と、

親父さんに言ったと言うことさ。

(出典 佐賀の民話2集 P174)

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