唐津市神集島 高崎正道さん(年齢不詳)

 ある日、大ほらふきの勘右衛門が、

「まぁ、家(うち)の屋敷は相当広かぞ。家はゴウリ四方あるぞ」

と、仲間に言った。すると、仲間の一人が、

「ほうー、勘右衛門どんの家は五里四方もあるかい」と、びっくりした。

仲間はびっくりして、

「おい!みんな聞いてくれ。勘右衛門どんの家は五里四方もあるてばい」と言うと、

仲間の一人が、

「なんて、勘右衛門どんの家は、こまか家でしか中との、五里四方もあるか」と言った。

すると仲間の一人は、

「いんにゃあ【いいえ】。こりゃ、勘右衛門どん家ば一回、見に行ってから、

ペシャンコにせにゃいかんぞ。

とにかく『五里四方ある』て、言わしたけん」と言った。

また、仲間の一人が、

「時には、やっつけてやらんばならんぞ。勘右衛門どんから、いつもやらるっけん」と言った。

「おぅーい。勘右衛門どん、お前の家が五里四方もあんない、いっちょ見物させろ」と、

仲間の一人が言った。そして、

「勘右衛門どんの家は、五里四方も、何のあろうか。

今日こそは、勘右衛門どんば、ペシャンコにしてやらんば」と言った。

すると、勘右衛門どんは、

「そんなら行こう。家まで来い」と言って、仲間を連れて行った。

仲間の一人は、勘右衛門どんの屋敷が小さいので、

「お前方の屋敷は?」と尋ねた。

勘右衛門は、

「ここやっかい」と言った。仲間の一人は、

「こいで五里四方か。たったこいだけしかなかとに。うちの半分もないじゃないか」と、

勘右衛門どんに食ってかかった。

すると、勘右衛門どんは、

「ないのその、食ってかかる必要があろうか。

うちの庭はゴウリ【赤い実】四方じゃっかぁ」と、仲間に言った。

仲間はそれでも納得しなかった。

「ゴウリが壁にずうっと、いっぱいあろうが。だから、ゴウリ四方になるわけ。

うちの家はゴウリ四方だ」と、勘右衛門どんは仲間に言った。

仲間はまたもや勘右衛門どんにやらかされて、しぶしぶ帰って行ったと。

(出典 佐賀の民話1集 P248)

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