唐津市木綿町 宮崎利一さん(年齢不詳)
唐津市 竹内和子さん
勘右衛門さんは、屏風の影に隠れて寝ていました。
勘右衛門さんの顔には、
手ぬぐいをかけて、死んだふりをしていました。
借金取りが来るたび、勘右衛門さんの奥さんは、
「勘右衛門は、昨日の晩にふぐを食ったので中毒して亡くなってしまいました」と、
悲しそうに泣きながら言ってました。
すると、借金取りは、
「いやぁ、それはかわいそうな。それでは ここに香典を置きます」
と言われました。
そして、勘右衛門さんの奥さんは、
「いや、そんなにしてもらっては、どうも気の毒です。
あなた方から金を借りている上に、
香典までもらっては」と、言いました。すると、
「まあ、良いからとっておきなさい」と、借金取りが言うと、
「いいえ。これは、どうぞ、お持ち帰んなさい」と、
勘右衛門の奥さんは香典をもらおうとはしませんでした。
そのことを屏風の影に隠れて寝ていた勘右衛門さんは、
「とっとぉーけぇ、とっとぉーけぇ」と、
言ったけど、奥さんには聞こえませんでした。
それで、勘右衛門さんは大きい声で、
「とっとけぇ！」と言うと、屏風が倒れてしまいました。
すると、勘右衛門さんの奥さんは驚いたふりをして、
「あーら！勘右衛門さんの幽霊が出た」と言ったので、
借金取りは、驚いて逃げ去って行きました。
(出典 佐賀の民話1集 P239)
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