杵島郡白石町(旧有明町)下牛間田 栗山藤市さん(年齢不詳)
北山のふうけ【馬鹿】者が、
町へ焚物(たきもん)【燃料】を馬に付けて売りに行きました。
そして、町のある魚屋の親父が、
「その焚物、俺が皆買おうでぇ」と言いました。
北山のふうけ者は、その魚屋の前で
焚物を馬から降ろしたのですが、親父さんは急に、
「こりゃあ、買わん。持って行きない」と言われました、
北山のふうけ者は、せっかく降ろした焚物をまた馬に付けて、
自分の家へ戻りました。
翌日、北山のふうけ者は、昨日の魚屋の親父の所に行ったのですが、
魚屋の親父は留守でそこの嫁さんがいました。
北山のふうけ者は、
「この鯛は幾らじゃいけん【でしょうか?】。
俺は田舎者じゃっけん【だから】、
この鯛が逃げよっごとばっかいあっけん【逃げ出すように思うから】、
しっかり結んでくいございのう」と、魚屋のお嫁さんに言いました。
それで、嫁さんは太い縄を持って来て、その魚を結んで、
「持って行きんさい」と言って、差し出しました。
すると、北山のふうけ者は、
「こりゃあ、買わん。昨日、お前の親父も馬から焚物ば降ろさせてから、
『買わん』て言ったけん、俺も買わん」と言いました。
魚屋の嫁さんは、
「鯛の魚ば塩ないどんせじゃ」と言って、塩をかけたそうです。
北山のふうけ者は、焚物の仕返しをすることが出来たと言うことでした。
(出典 佐賀の民話第二集 P214)