杵島郡白石町秀津 山崎徳太郎さん(年齢不詳)

 むかし。

あるところの男が、飯(めし)食わない嫁にしたそうです。

ある日の昼過ぎ、その家族がご飯を食べようとしたら、

ご飯がなくなっていました。

家族は、誰がご飯を食べてしまっただろうか?と、

いろいろ調べていました。

それで、嫁が一ヶ月も二ヶ月もご飯を食べないから、

家族は、家の外から隠れて嫁の様子を見ていました。

それとは知らずに嫁は、釜からご飯を握って、

頭の髪を両方に分け、何個も入れ込んでいたのです。

それで、家族は驚いて、夕方に戻って来て、

「さぁ、ご飯どん食びゅうか」と言いました。

すると、嫁は、

「ご飯は、なかですよ。私が昼寝しとったいば、

先刻起きてみたいば、ご飯の入っとらん。

なし(なぜ)、いつでんうちのご飯は、なくなるからねぇ」と言って、

知らぬふりをしていました。家の人は、

「どうしたもんじゃろうかのう」と言いました。

それから、あるところから、山伏さんが現れて、

そのことを立ち聞きしていました。

嫁は山伏さんを見ると顔が青ざめ、障子に隠れました。

家の人は

「うちの嫁は、どうも盗人のごと怪しか」と言いました。

そして、障子を見ると、

「あや、何の影か?」と言いました。

その影は化け物だったのです。

嫁は山伏さんを見て、化けて通すことが出来なくなったのです。

すると、化け物は家族の人たちを食べようとしました。

山伏さんが菖蒲を取り出すと、

化け物は恐ろしくなって、逃げて行きました。

それから、六日の菖蒲と言うそうだ。

そいばっかい。

(出典 佐賀の民話第二集 P209)

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