神埼郡脊振村鳥羽院下 森田五郎さん(年齢不詳)
倉谷のふうけ(ばか)息子が嫁さんをもらった。
家の人は、ふうけ息子のことをいつも心配していた。
ある日、ふうけ息子に嫁の里から新築祝いの案内があった。
家の人はふうけ息子に、
「『こなた、りっぱな新築でおめでとうございました』と言え。
そいから、ひょっと穴どん開いとるなら、
『ここには、お守りさんの札を貼ったらよかろうね』と言え」
と言って、教えてあった。
ふうけ息子は、嫁の里へ新築祝いに行った。
そして、ふうけ息子は教えられたとおり、
「こなた、りっぱな新築でおめでとうございました」と言った。
それから、家を見回していたら、穴が開いていたので、
「ほんに、ここに穴が開いとっけん、こりゃ、お守りさんの札を貼ったらよかろうね」
と言った。
嫁の里の人は、ふうけ息子が帰ってから、
「ほんにふうけとるというが、ふうけとらんばい。あれくらいなら、よかよか」
と、言い合った。
またある日、嫁の里でおばあさんが亡くなった。
ふうけ息子は、おくやみに行かなければならなくなった。
家の人は、こんどはふうけ息子に何も言うことを教えていなかった。
ふうけ息子は、嫁の里へおくやみに行って、
「ほんにおばあさんが死なして、おめでとうございました」と言った。
そして、ふうけ息子はおばあさんを見回していたら、尻の穴を見て、
「この穴、お守りさんの札を貼ったらよかろうね」と、言ったので、
やっぱりばか聟(むこ)さんだということがばれてしまったということさ。
(出典 佐賀の民話第二集 P65)