吉野ヶ里町上中杖上 堤 ウタさん(明44生)

 大体、着物ちゅうとは縦に裁断して

着っですもんね。

そいをその、どなたか知らんけど

横ぎれ使うてはまい着物(ぎもん)ば着とんさったて。

そいぎその、何か田舎は井手上(いであ)ぎちゅうて、

水取いのあいよったですよ。

井手ん所に木を打って、そして井手を上げよってから、

あの、その人が何とか言わしたらしかもん。

そいぎぃ、足らんじやったか何か知らんけど、

そこまでちょっと覚えませんけど。

とにかくその人が横ぎれの着物を看とったけんね、

「そんない、あんたがここの木の代わいになんさい」

ち言(ゆ)て。

そいでその、横ぎれで着物作んもんじゃい

なかて。

[大成 本格新四六 長良の人柱]

(出典 未発刊)

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