吉野ヶ里町箱川下 月山ヨシエさん(明43生)

 あの、桑の藁ば摘みぎや行たて、

篭(かご)に入れておんしゃっぎとばね、

あの、鷲のブーッと飛んできてね、

その子供さんば、あの、掴えてさい、

飛び去ろうとしよっ時、

「やーあ」ち言(ゅ)うて、あの、

お母さんのひよーっと付け紐(ひぽ)に

下がんさったて。

そいぎぃ、付け紐がその、袖じゃい

付け紐じゃいじゃんね。

どうしたつちや切れとんもんね。

そして、自分がそいばもう、あの、大切にしてから、

ずっとさい、あの、回って歩(そう)つきよんさった。

捜して歩つきよんさった。

そしたぎとは、あの、そや、何処、お寺の松の木、

銀杏( いちょう) の木 ち、言いなったと

思うばってん。

何(ない)の木じゃいの所(とこれ)ぇ

子供の泣き声のしよったけんねえ。

「あら、あつけぇ子供の泣き声のしよっ」ち

言うて、上ば見んさったぎぃ、こう太か鴬が

掴んで持ってきとったて。

そうしたぎぃ、一人や登ろうでしよんさった。

一人や衣ね、こうしてすけとんしやったぎとは、

その、落としたて。その子供ば。

そいぎぃ、ちょっと受けて助かったわけたいね。

そいから、あの、ほんに良か坊さんに

なっとんさったちゅうもんね。

(その坊さんが、何の坊さんこっちやい知らん)

[大成 一四八 鷲の育て児]

(出典 未発刊)

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