三田川町箱川下 月山ヨシエさん(明43生)
庄島峰雄さん(昭2生)
涅槃(ねはん)さんのね、亡くなんさっ時ね、
皆(みん)ながあの、鳥(とい)でんないでん飛うで行たてやろうが。
そして、
「私(あたし)はば何(ない)食べてよかやろーか」ち言うて。
そうしたりゃ、雀は、そのなーいね、
着の身着のままで、洒落もせんで、あの、
涅槃さんの供養にその来たて。
そいばってん、燕は紅化粧つけて
立派(じっぱ)い洒落て、あの、遅(おす)う来たてったい。
そいぎにゃあ、その、そいけん、燕には、
「虫けらどん食え」て。
「雀は早(はよ)うからお手伝いしたけん、お前は米てん麦てん、
その、良かとば食うて良か」て、言いなったちて、誰(だい)じゃい言いよったなたあ。
そいぎねぇ、あの、蛇(くちなわ)がねぇ、ヒョロヒョロて来たて。
そしたぎ蛙が、もう早う来とったらしかたんたあ。
「涅槃さん、涅槃さん。私(あたし)ゃ、あの、
何(ない)ば食べて良かろうか」ち、言うて言う。
「ふうけ者が、わが、今のうどん来たない、
俺(おい)が尻(しい)どん嘗(な)めろう」ち言うて、蛙が言うたて。
そいけん、蛙(びっきー)は尻から飲まるって。
こがん言うて聞かせないよった。
[大成 四七A 雀孝行・七二 蛙と蛇]
(出典 未発刊)