三田川町萩原 小宮ヤエ子さん(大8生)
むかし。
和尚さんの何時(いつ)まっでん部屋から、
部屋さい行たて、自分の部屋さい行たて、いっちょん帰って来(き)んさらん。
行くぎにゃ、こそっと、どがんじゃい
隠したごとしんさった。
そいぎぃこやおかしかねぇ、と思うて、
行きんさったぎにゃあ、何(なん)じゃいめぇかかったげな。
「こいは何ですかあ」て、言うたら、
「こや、あの、毒の入(は)いっとっ」て、言んさったろう。
そいぎぃ、おんさらん時、行たてみたら舐めてぎぃ、
ほんにおいしかったて。そいぎぃ、
「ちょっと舐めてみゅうかあ」ち言うて、
あがんと小僧さん達の何人か舐めんさったぎぃ、
のうなってしもうたて。
「そやあ、こや、おおごと」と言うて、今度(こんだ)あの、
「花瓶なもう、おごらるっけん」ち言(ゆ)うて、
花瓶ばわんざと割って、そして、その、和尚さんの来(き)なった時ゃ、
しくしく泣きよったて。
誰(だい)でん全部(しっきゃ)あ。
そいぎぃ、
「何(ない)したかあ」ち言うぎにゃ、
「花瓶割ったけん、毒ば飲んで死のうで
思うてしたぎにゃあ、死なん。まあーだ死なん」
ち言うて、泣きないよったところば、ちょっと聞いたごとあんね。
(出典 未発刊)