三田川町苔野 坂井トヨさん(大7生)
ほら、今は七十歳以上のねぇ、
お婆さんの食い口のねぇ、家族の少ないでしょうが。
そいでちょっと減らすために息子さんがね、お婆さんを背負(かる)うて。
そいぎぃ、お婆ちゃんは木のあいばね、ずうっと切っては落し切っては落し、
「帰り道のわかるように」ち言(ゆ)うて、捨ててね。
お母さんは、わが捨てられて行きよっばてんね、
「息子の帰り道のわかるように」ち言うて、
枝をね、切ってはずうっと道に。
それを見て息子さんがね、お母さんは、ぎゃんとしてね、
自分の親を捨てに行きよっとこれ、親は、
「息子が帰り道のわかるように」ち言うて。
[大成 五二三A 親棄山 AT九八一]
(出典 未発刊)