三田川町力田 池田スミコさん(大10生)
お母さんば、セノウとか何(なん)とか言おうがね。
あれに乗せて、背負(かる)うて山に行って、そして、捨てて帰る時にね、
「もう、これは済んだけんね、ここに置いて捨てて、もう焼いてもよか」
ち言(ゆ)うて、言ったけれど、婆さんがですね。お母さんが、
「それは持って帰らんと、お前(まい)が、また年のいった時に
背負(かる)うとにちゃんとなわしとかんば」て、言うたけんね、
「そんないでけん」ち言(ゆ)うて、
お婆さんば背負うて連れて帰ったちゅうて。
親ば捨てたらね、自分の身にも返ってくるけんちゅうところでね。
で、またそれに乗せて連れて帰ったちゅう。捨てんばならんちゅう触れはなかったばってんね。
婆さんが余(あんま)い、この子があせがるけん、
「ええ、せからしか。この親、昔ゃ捨てよったけんが、
お前(まい)も山さい行かんか。山にはいっぱい友達がおっ」
ちゅうところで、連れて行ったて。
そして、そのモッコじゃなし、セノウとか何(なん)とか言いよったですもんね。
セノウのあれに乗せて、行ったぎぃ、
「持って帰れ」ち言われて、
「また、お前(まい)も子供から、こういうふうにされて、
それを持って来(こ)んばなんけんが、持って帰れ」ち言われて、
家さい持って帰って焼いたとか何とか、
話ゃお爺さんがよう、寝ながら話しよった。
[大成 五二三C 親棄番 AT九八〇A]
(出典 未発刊)