脊振村岩屋 副島セキさん(明202生)

 むかし。

あぎゃんと二番(がく)さんのじゃねぇ、二番嬶さんのその、椎、椎ば、

今度のわが持った嬶さんの子と娘の子のおったて。

そうしたところがその、椎ば拾いぎゃ二人連れて行きなったてちゃん。

そのわが子は、椎の実その、椎拾うて入る袋はあの、

結-どらすばってん、しょてぇの嬶さんの子んとは尻ば、尻ばぽいさせといなっ。

そいもんじゃもう、毎日(ひんがひ)にその、椎拾いぎゃ行きなっばってん、

その、わが子んたあ、いっぴゃあなっばってんがその、

しょてぇの嬶さんの子んたあ、いっぴゃあならんもんぎゃい、もうほんに困って困って。

「わがんたあ、いっちょでん溜まらんじゃっかあ」て、責めらるって。

ほんに困ったこと、ほんに困ったもんと思うて、おいなったところが、

その、(あんま)いまた行きなったぎにゃあ、権現さんに、

「権現さん、権現さん。

あぎゃんと、こなたに一晩泊めてくんさっこたあなんみゃあかあ。

幾ら椎ば拾うばってん、いっぴゃあならんけん」て、言いなったもんじゃい、

「鬼の来っけんが、俺が陣八笠ば持って来て、バサ、バサ、バサ、言わせた時ゃあ、

コケッコッ歌うて。そした時ゃ、そいが逃ぐっ」て。

「そん時ゃあ逃ぐっけんが、うち食うこっちゃあわからんけんが、ここはでけん」

て、言うばってんが、

「泊めっくんさい」言うて、泊ってっちゃん。

そいぎその、一時(いっとき)ばかいもう、十二時過ぎなっきにゃあ、そいが歌うて。そいぎぃ、

「さあ、もう夜の明くっじゃあ」ち()うて、ワァ、ワァ、ワァで、逃ぐってっちゃん。

そいぎぃ、助かいなってっちゃん。

そいぎぃ、助かいなったて。

〔大成 二一二 栗拾い〕類話

(出典 未発刊)

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