吉野ヶ里町目達原 今村又司さん(明45生)

 馬鹿息子がおったそうです。

何させたっちゃもう、ためにならん。

やいそこなうばかい。

「わがも、何かいっちょ、商売なっとんしてみれ」て。

「そいならいっちょ、お茶ば売って来ぇ」

売って回って来るも、よか塩梅あ売って来んちゅうわけですね。

他にまあ、品物を売って来いち言うて、

持たせてやっても全然売って来んそうです。ところがですよ、

「そんない、魚いっちょ売って来い」ち言うて、

魚ば今度(こんだ)あ篭に入れて町ば行きよったちゅう。

ところが、ちょうど火事が、家が燃えて火事だったわけ。

そいけん、馬鹿息子がですね、

その魚を火の燃えてくべたらしかです。

そうしたら、火事が消えたそうです。

そいで馬鹿が、

「ああ、よかったあ。人んため家を消してくれた」と。

まあ、そういう話を私、聞いたごとあっですね。

[大成 三三〇A 一つ覚え 物売り型]

(出典 未発刊)

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