吉野ヶ里町 野中ツルさん(大5生)
猿(さっ)と蟹(がい)が、
「餅搗こうやっかい」ち。
猿が、
「お前(まい)は臼借ってきやい」ち言うた。
そいぎ、自分は杵借ってきて。そして搗いてから、
「お前は、杵返してこい」て、猿が言うた。
そうしたら、杵返しに行っとっうちに、
猿がみんな餅取って柿の木に登ったて。
蟹が戻ってきて、餅がなかもんぎゃい、
そっと見たら上に登っとんもんじゃい、
「俺もいっちょくれーんかん」ちて言うた。
そいぎぃ、
「嫌(いや)ばーん」ち言うたち。そいぎぃ下から蟹が、
「お爺さん達は、あの、枯れ木に引っかけ引っかけ食べないよった」
ちて言うたて。そいぎ猿も真似して、枯れ木に、
こう引っかけ引っかけ食べよったぎんと、枯れ木は折れたて。
そいぎぃ、蟹がごそごそっと行たて、
餅ば穴ん中に持ってはしったて。
そいぎ今度(こんだ)あ降りて来て、
「俺も、いっちょくれーんかん」ちて言いよったって。
そいぎぃ蟹が、
「嫌ばーん」ちて言うたて。
そいぎぃ、その穴にお尻ばやって糞(くそ)かけたて。
そいぎ、蟹が、はさんだて。
そや、猿の尻は真っ赤て。
[大成 二三 猿と蟹の寄合餅 cf.AT九C]
(出典 未発刊)