吉野ヶ里町荻原 小宮ヤエ子さん(大8生)

 猿と蟹(がに)が餅搗きしょうと、

猿が蟹に杵ば借りにやった。

その行たとっ間に、自分が餅米でん何(なん)でん用意して。

そいぎぃ、取って来っぎぃ、

「そがんとで搗かるっかあ」ち言(ゆ)うて、

「また、今度(こんだ)あ、良かとば取って来(け)ぇ」

ち言うて、また良かとば取りにやって。

そいぎにゃ、その、おろいかとの

その曲がりくねったとで自分の餅搗(ち)いて。

そして持って来た時ゃもう、

搗いてしもうてわがこた上さい上(あ)がってしもうとっ。

柿の木じゃ何(なん)じゃい登って。

そしてもう、あいして、

わが全部(しっきゃ)あ丸めて、さい上がっとぎにゃあ、

「くいろ」ち言(ゆ)うぎぃ、くれじぃ。

そがんしょったぎにゃあ、蟹が

「枯れ木に引っかけて食うぎうまかばい」ち言うたぎぃ、

猿がそぎゃんしたぎぃ、餅ん袋のおっちゃえたぎにゃあ、

その袋ぐるみ蟹が穴ん中(なき)ゃあ入(ひ)ゃあくい込んで、

今度あ、あの、猿がね、

「いっちょくいろ。いっちょくいろ」て言うばってん、くれん。

そいぎぃ、

「穴ん中に糞たれかけよったぎぃ、

蟹が猿の尻ばはすんだけん、あがん赤くなったち。

そいけん、お猿の尻は真っ赤(きゃ)赤(きゃ)。

[大成 二三 猿と蟹の寄合餅 cf.AT九C]
(出典 未発刊)

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