吉野ヶ里町伊保戸箱川 野口トワさん(大3生)
むかし。
猿と蟹とね、あいしてあの、
餅搗こうかちゅうことになって、
「そんならお前(まや)あもう、
砂糖てん小豆(あずき)てんば買(こ)うて来(こ)んかあ」て。
そいぎぃ、猿がそぎゃん言うて、
「自分な買うて来っけん、お前ぁ臼ば借っ来い」て、
自分買うて来て、臼ば借って来て、搗いて、搗き上ったぎぃ、
自分が袋にね、入れて木に登って。
そいぎぃ、自分ばっかい食べよんもんじゃい、
「俺もいっちょくれーんかい」ち言うて、下から。
「いやじゃあ」ち言うて、もう自分ばっかい食べて。
そして、その袋ば落して。
落したけんおろたえてその、
蟹は拾うて穴ん中さい持ってはしって食べよったぎぃ、
「俺もいっちょくれーんかい」ち言うたぎぃ、
「いやじゃあ。わがもくれんやったやっかあ」ち言うて。
そいぎぃ、
「よーし。そんないば俺(おい)、わが糞たいかくっじゃあ」ち言うて。
そして、気張ってしよっとこれぇ、
蟹が這(ほ)うて来て、尻を挟(はそ)んで。そいぎぃ、
「あ痛(いた)」ち、言いよたったぎぃ、猿(さん)の尻ゃ真っ赤ちて。
そいばっきゃ。
[大成 二三 猿と蟹の寄合餅cf.AT九C]
(出典 未発刊)