神埼郡吉野ヶ里町坂本 森田官市さん(明24生)
目達原(神埼郡吉野ヶ里町)の人で、その人は横道孫兵衛て言(ゆ)う人で。
主人が、
「お前(まい)、今日、苗取ってくれんかい」て。
「はい、はい。取りましょう」ち言うて。それで田植えの時の苗取り行ったて。
「お前、苗取ったかあ」「はい、苗取ったあ」
「どのくらい苗取ったかあ」「あなたあ、『苗取れぇ』て言うけんが、
田ん中(なき)ゃあ出てぇ、苗取ったあ」
「田の草取らんだったかん〔かね〕」
「何(なん)言いよっかなあ〔いってるのかなあ〕。私や、親方が
『苗取れえ』と言うたけん、苗取ったあ。
ぎゃんして〔このようにして〕苗取ったあ」て。そいで、
「馬使う」と、言うたところが、
「馬はどこん辺(にき)、使うやろうかあ」と言うたら、
「この馬の行くごとしとったぎと〔していたら〕、この馬は大抵知っとるけんが。
この馬の行くごたるふうにせろ」
「はい、はい」
そうして、黎(すき))ばかけて、馬は行く。
「こいも、わが家(うち)んとか。こいもわが家んとか」と言うて、
ずーっと、目達原から佐賀まで、ずーっと黎いて走ったて。
そして佐賀さん行たげな〔行ったそうな〕。
〔笑話その他〕
(出典 吉野ヶ里の民話 P183)