神埼郡吉野ヶ里町立野 福島康夫さん(大6生)
殿様ですね、結局その、非常に話しが好きで、
ええ、まあ結局もう、面白くて長い話をですね、
した者には褒美をやると言うお触れがでたそうですよ。
そいでその、頭のいいその、青年がですね、
あの、殿様ん所(とこ)に行って、まあ結局、話をしたち言(ゆ)うわけですね。
結局その、米蔵の中に何百俵というその、
米をその、積んでですね、いっぱい集めてあったと。
それをその、一匹の蟻がその、見つけてですね、
それをその、一粒ずつ持ち出すことになった、ち言うわけですね。
そいでその、毎日毎日その、持ち出すち言うわけですね。そいで、
「もう、そやよか〔それはよい〕。もう、そいでよかけん」て、殿様が言うわけ。
「いや、こいから先ゃとにかく、
この米ば全部持ち出してしまわじにゃ〔しまわなきゃ〕、話されんたい」と、
言うことですね。
「そんなら、何時(いつ)ごろまでかかっかあ」て、言んさったところが、
「わからん。何十年かかっじゃいわからん」と。
「もう、そいでよか」と言うて、殿様から褒美を貰ってですね、
帰ったと言うようなことを、まあ、親父から話聞きよったけんね。
〔大成 六四一 果なし話・第一類(AT二三〇〇)〕
(出典 吉野ヶ里の民話 P187)