神埼郡吉野ヶ里町上三津 筒井徳一さん(明20生)

 横道孫兵衛さんて言う人が、まあ、地主の所へ雇われて、

一年中、雇われて奉公しとった人らしか。

なかなかその人が力持ちで、大食家で、ご飯を三人前ぐらい食べたらしいな。

そいぎい、他所(よそ)の人が、ちょっとそこの親方の家へ来て、

尋(たん)ねたらしい。

「ここの孫兵衛さんな、ほんによう働く。仕事もさばくっ〔はかどる〕」

ち言うて。そいぎい、親父さんが、

「なあーん。孫兵衛さんな仕事さばくっかわり、ご飯が仕事すっもん」

ち言うてっじゃんもんな。そいぎい、今度(こんだ)あ、

「今日は孫兵衛さん、米播(す)る仕事のできたけん、

こいいっちょ〔ひとつ〕播ろう」ち言うて。

「そんなら、おじさんの言うごつ、米播るなら、米播ろう」ち言うて。

そいぎい、そこのお母(か)さんに、

「お母(っか)さん、握り飯を、こん〔こん〕太かとば

五つばかり握ってくれんかい」ち、言うたらしか。

「そりゃ、安かこっ。握ってやろう」ち言うて。

そいぎい、孫兵衛さんがその握り飯を風呂敷包んで、

竹にこうやってな、それを持って行って、いいつけたて〔結んだそうだ〕。

「大将。あんた、この頃、ご飯が仕事すっ」と言うて、

「あっけえ握り飯五つも括(くく)いつけちゃたが、

あのご飯にゃ、一つも通らん。槍が動かんばい」ちて。

「俺がしょっち〔いつも〕言うこっちゃ、口も言いよらんばい。

飯の仕事すっとばかり言う」て。

その人が親方を困らせたという話。

〔大成 五九〇 仕事は弁当〕類話

(出典 吉野ヶ里の民話 P181)

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