神埼郡吉野ヶ里町目達原 大塚サヤさん(大10生)

 小僧さんが三人おってですね、

あの、和尚さん帰って来(き)んさっと待っとっとでしょ。

そしてから、余(あんま)い来んさらんもんじゃいけんが、

とにかく餅焼いて、あの、和尚さんは年中帰ったら餅焼いて食(く)いんさって。

そいけん、俺(お)どんも欲しかばってん、

いっちょん和尚さんのくんさなかて〔くださらない〕。そいぎい、

「あの和尚さんのまた今日(きゅう)も帰ってから食べんさっやろう」て、

誰でん寝ながら待っとったそうですもんね。

そうしたら、和尚さんのとことこ帰って来てから、

あの、餅を焼いて食べよんさったて。

そうして、こう膨(ふく)れたもんじゃいけんですね、慌ててこうして、

「熱(あつ)、熱、熱」て、言んさったて。和尚さん弟子が、

「あつあつ」て、名ば変えとったそうです。

そいぎんたあ、

「はい」ち言(ゆ)うて、出て来た。

「ほう、お前(まい)、何しょっかあ。早(はよ)う寝とけえ、寝とけえ」て。

「私(あたし)ゃ今目から、あの、『あつあつ』に名前を変えましたもん」ち。

「ああ、そうか」ち言(ゆ)うてから、その人も餅ば貰うたて。

また餅ば焼いて食いよんさった。

「お前(まい)、もう早(はよ)う寝ろ。遅かけんが早う寝ろ」て言うて、

寝せられてからですね。

その次、今度また、あの、食べよったら、

「あったふうふう」とか言んさつたぎんと、

「はーい」ち言うて、ほかの小僧さんが出て来た。

「お前、何(なん)しぎゃ出て来たかい、今のう。早う寝やこて〔寝なきゃ〕」

「いや、今日から私(あたし)『あったふう』て、名前を変えました」

「ああ、そうか。そんなら、お前もちった〔ちょっと〕やろう」ち言うてから、

「もう遅かけん、お前、早う寝ろよ」ち言うてから、言われて寝せられて。

そうして、餅ば食べてしまいんさったぎぃ、そん時に、

「さあ、もう寝(に)ゅう〔寝よう〕かねえ」ち言うてから、

和尚さんの言んさったぎんと、

「はい」ち言うて、またもう一人(ひとい)とが出て来た。

「おい、お前、何し出て来たかい」て。

「私や、『もうにゅう』に名前を変えましたもんじゃい」ち言うた。

「早う来(こ)んけん、もう寝ゆうでてしょったん。もう寝ろ、寝ろ」て、

もうにゅうがいちばん損したて、聞きましたけどねえ。

〔大成 五三四 小僧改名〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P174)

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