神埼郡吉野ヶ里町小山内 築地カネさん(明37生)

 蒔(ま)かない種は生(は)えんち言(ゆ)うて、

こう太かかぼちゃの生(な)ったけんが、

ちぎって〔取って〕お爺さんの来なったち言うて。

そうして、そいば(かぼちゃを)食うたところが、

「そりゃあ、何処(どこ)からそのかぼちゃちぎって来たかん」

ち言うから、言いなったりゃ、

「あすけぇ、生っとった」ちて。

そいけん、かぼちゃの蔓(つる)ば尋ねて行きなったところが、

猫ばうち殺(これ)えてなたあ、埋(い)けとらしたて。

そしたら、そいから猫の口から、かぼちゃの蔓の生えたて。

そうして、猫の口から、かぼちゃの出てきたて。

そいけん、今

「蒔かぬ種は生えん」ち言うて、

「蒔かない生えたかぼちゃは食うことなん」ちてから。そいけん、

「毒下し(どっくだ)」ち言うて、

「三月三日に桃酒ば飲むと、腹の毒の下(くだ)っ」ち言うて、

「ありゃあ、桃酒飲むと」ち言うて、言うて聞かせないよったばんたあ。

そいけん、蒔かん種は食うもんじゃなかちて。

〔大成 二五四 猫と南瓜〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P105)

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