神埼郡吉野ヶ里町目達原 大塚サヤさん(大10生)

 お爺さんに破れ袋と、お婆さんによか〔よい〕袋て。

お爺さんは、いっちょん〔ひとつも〕溜らじい〔ずに〕、

あの、お宮じゃい泊まんさった

〔かに泊まられた〕ですよね。

そうしたら、鬼の出てきてから、どんちゃん騒ぎですね、

もう、くう〔うんと〕酒盛りしたんです。

そいぎんとはもう、その人はもう恐ろしかもんじゃいけんが床ん下に、

じいっと引っ込んどんさったらしか(隠れられておられたらしい)ですもんね。

そうしてから、余(あんま)い帰らんもんじゃいけん、

もう夜の明くっごと〔が明けるように〕

「バタバタバタ、コケコッコー」て、鳴きんさったて。そいぎ鬼が、

「あら、鶏の鳴いたぞ」て、言いよって〔言っていたと〕。

そして、またしばらくしたら、また、

「コケコッコー」て、鳴きんさったぎと〔鳴かれたら〕、

「もう二番鶏の鳴いたぞ」て。

そして、また三番、また鳴きんさったそうですもん。そうしたら、,

「こや〔こりゃ〕、もう三番鶏が鳴いたら陽が出て来っけん〔来るから〕、

早(はよ)う帰らんば〔帰らなきゃ〕」ち、おろたえて帰ったら、

宝物をたくさんそこに置いて帰ったち。

そいぎい、そのお爺さんはみな宝物を拾うて帰んさったそうです。

そしたら、欲ばりのお婆さんが、今度(こんだ)あ、

「俺(おい)も、椎拾いに行こう」ち言(ゆ)うてですね、

行きんさつたぎんとは〔行かれてですね〕、

もうたくさん拾いんさったばってんが〔拾われたけれども〕、

あの泊まられんけんが〔泊まられないから〕、

わざと破ってから拾いんさって。

そして、床ん下にかがんどんさったて。

そうしたら、あの、その人から話しば聞いて行ったもんですけんね。

鶏の真似してから、

「コケコッコー」て、言んさったて。

そして、おかしかもんじやいけん〔おかしいものだから〕、

「クスクス」て、言んさったて。

そいぎぃ、また、その次も二回、三回ながら言うてからですね。また、

「クスクス」て、言わしたけん〔言われたから〕、

「ああ、もう誰(だい)かおっばい」ち言うてから、

歩(さり)いてですね、その人は血だらけなって帰ったとか、どうとか。

そいまあっきゃ[それでおしまい]。

〔大成 二一二 栗拾い (AT四八〇)〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P87)

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