神埼郡吉野ケ里町箱川下 月山ヨシエさん(明43生)
妊娠で亡くなっしやったけんね、
あの、長肌着ば着せて、(昔や焼きよらんやったろうが。)その、
土葬やったけんそのないしてやっちゃったて。
そうしたぎとは〔そうしたら〕、赤ちゃんば自分が産んでから、
飴がた買(か)いに来っ時に、ただでは買われんもんじゃいけん、
そのね、自分が着とった着物(きもん)ば、あの、持って来てさい、
飴がたば買(き)やあないよったもんたんたあ。
持って来てねえ、あら、ぎゃんとば〔こんなのを〕
持って来なったもんじゃいけん、人んと〔人の物〕じゃいけんと思うて、
きれいに洗うて、干しちゃったて。、そうしたぎとは、
「あらー、ほんにあのー着物(きもん)な、家(うち)の前ね、
死んだ人(しっ)たんに着せた着物と同じんごたっー」ち言(い)うて、
そいからわかったち言う話。
そうして、掘い返しなったぎとはね、
あの、そぎゃん〔そのように〕して赤ちゃんの
生まれといなった〔生まれていた〕て。
そぎゃん言うて育ちないよったて。
そいけん、ちょっと長肌着のね、あったけんが、
あの、ちょっとわかったちゅうわけたい。
そいけん、ありゃあ、ほんにあの長肌着や家の長肌
着んごたっちゅうごたっふうでさい。
そいぎと、洗うて干(へ)えてあったもんじゃいけんね。
掘い返しなったぎと赤ちゃんの生きとった、ち言う話ば聞いたたい。
ほんなことこっちゃい、虚言(すらごと)
こっちゃい[かどうか〕知らんばってん、話たい。
〔大成 一四七A 子育て幽霊〕
(出典 吉野ヶ里の民話 P61)