神埼郡吉野ヶ里町小川内 築地カネさん (明30生)

 お爺さんの山に行きんさったところが、

鶴が罠(わな)にかかって、苦しんどつところば、

お爺さんの助けてくんさったてなたあ。

そしてから、帰って来てから、

「ぎゃんして〔こうして〕今日は鶴の罠にかかっとったけん、助けた」

ち言(ゆ)うて。

そうして、婆さんに言うて話しよっとこれえ〔話しているところに〕、

まあ、雪の降る時、立派(じっぱ)な娘がここの門口に立って、

「お爺さん、お爺さん。この間、助けてもろうて有難うございました」ちて。

そして、

「恩返しに何(なん)か」ち言(ゆ)うて。

「私ば家(うち)に入れてください」ち言うて、入れたて。

家、その娘嬢ば入れて。そして、

「私が部屋に入っとっ間は、何でん開くることはならん」ち言うて、

言うたけん、開けじおったばってん〔開けずにいたけれども〕、

もう、何日でん出て来(こ)んけん、こうして見たところが、羽ば抜いてなたあ、

その機(はた)ばもう、立派(じっぱ)な物(もん)ば織って、

その機ばもう、立派な物ば作って、

「こいば持って、町行たて売って、立派な物ば買う」て。

鶴の恩返し、そいけん、

「見ることならん」ち言うて、やったとば見たけん、そいでやめて。

立派な物を織ってお爺さん、お爺さんは助けたち。

そいが、鶴の恩返しち言うなたあ。

〔大成 一一五 鶴女房〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P51)

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