神埼郡吉野ヶ里町吉田 徳安達次さん(明37生)
お釈迦様がですね、亡くなられる時に、
あらゆるあの、動物ばその、いろいろ大抵やあ、
枕元にあの、行ったと。
それで、例えば、雀は、その話を聞いてあの、
おろたえて【慌てて】ですね、あのまあ、化粧して行った。
ところが、燕は、ずっとあの、そういうふうなら、
のさんくそん【人に負けないように】来るだろうと、
いうことで念入れて、化粧をして真っ黒して行た。
それで、お釈迦様が、
「雀は、お前(まい」は、そういうようにあの、
俺が急な時に急いで来てくれたか。
そんなら、お前はあの、穀物を食べるように」と、まあ、こうおっしゃった。
「燕は、鉄漿〔かね〕黒々とつけて洒落て来て遅(おす)う来たから、
お前は罰に虫を食え」とその、虫を食うようになった。
ところがその、蛇がですね、
「それじゃ私もあの、人に負けんように早くは来よった」と、
そういうふうに言(ゆ)うた。そうしたら、蛙が少しばかりあの、
剽軽(ひょうきん)の性質で、
「なんか、お前(まい)か。お前は俺が尻(しい)を食え」と、言うたと。
それで蛇は尻から呑むっち、話は聞いとったです。
〔大成 雀孝行 四七A、七二 蛙と蛇〕
(出典 吉野ヶ里の民話 P29)