
猿蟹合戦
神埼郡吉野ヶ里町吉田 徳安達次さん(明37生)
まあ結局は、猿がいちばん利口であった。
それであの、何(なん)て言うか、蟹が握り飯を持っておって、
あの、猿が種を持っておったと、言うことですね。
それで、握り飯と、こう換えたちゅうわけでしょう。
そして、蟹がそれを蒔(ま)いて、非常にあの、可愛いがっとったところが、
グングンぬんで【伸びて】 柿が実(な)っごとなったと。
ところが蟹は、登いえん【のぼりきれない】と。
そいで猿が、
「そんない俺(おい)が登ってちぎってくるんない(くれるなら)」と言(ゆ)うて、
その、登ったと。そして自分は美味(うま)い物ばかり食べて。
下から蟹が、
「俺(おれ)もいっちょ〔ひとつ〕、落してくれんか」と、言うたけれども、
落としてやらずにやったのが、青かとを投げたり、蟹を殺した。
その話を聞いて、蜂とか、臼とかですね、非常にあの、腹を立てて、
「蟹のために仇討ちをやろう」ということで、臼が鉢巻きをですね。
蜂は槍を持って。
そして、栗は火鉢の中におって。
猿が火鉢にあたい〔あたり〕に来たらしい。
そして、何処(どっか)か
火傷して水につけていたら、そしたら上カら臼がトサッと落ちて、
蟹の仇討ちをしたというよな。
そいばっきゃあ。
[大成 二四 猿蟹柿合戦 (cf.AT九C)]
(出典 吉野ヶ里の民話 P18)