神埼郡吉野ヶ里町立野 福島康夫さん (大6生)

 猿と蟹(がに)が餅揚いて、

猿が餅ば持って柿の木に登って食よったと。

猿は餅ば落としてしまったけん、

蟹がそいば穴ん中に持って歩(さり)いて。

そしてその、お猿さんが,

相当お餅を好いとんもんだから、せがんだんでしょ。

そうしたらところが結局、蟹さんも

子供とか何(なん)とかあるもんだから、それを断わったんですよね。

そいで、あの、あとからにゃもう、猿が腹を立てて、

「わがその、どうせくれんならば、

もう穴ん中(なき)ゃあ糞たれてくるっじづやあ」て、言ったと。

そいぎい、たれよつところばその、蟹さんがはさみでお尻を挟んだと。

そいで、血が真っ赤に出てですね、

そいで未だにその、血がついて赤くなつとんさつと。

〔大成 二三 猿と蟹の寄合餅 (cf.AT九C)〕

(出典 吉野ヶ里の民話 P17)

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