神崎郡吉野ヶ里町力田 糸山 栄さん(大7生)
狐と田螺(たにし)は、
余(あんま)い仲の良か方じゃなかですもんな、ありゃあ。
あい、何(なん)かのきっかけでその、狐と田螺が、
「そんない[それならば]、かけごろしゅうか[かけっこしようか]」ち。
ところが、田螺はムジムジムジしといっ[している]。
狐は2間位(くり)ゃあ跳んで行くもんじゃい、狐が早かち。
ところが、田螺が、人間よいまいっちょ[よりもうひとつ]知恵の余計働いたて。
狐の尻尾にガブッと、かぶいちいて[噛みついて]から、黙っとったて。
そして、決勝点の所で狐の野郎が、
後ろから来よっじゃいきゃんと[来ているだろうかと]思うて、
ひょっと体振ったて。
ところが田螺ゃ、そん時にピョーンと、
口開けたもんじゃから[だから]、ピョーンと向こうさい跳んでしもうた。
決勝点の向こうさい。
そいばっきゃあ。
[大成 一一 田螺と狐(AT二七五)]
(出典 吉野ヶ里の民話 P10)