神崎郡吉野ヶ里町立野 福島康夫さん(大6生)
狸と狐は、こいどま〔こいつらは〕お互いにだますとが好きじゃんもんじゃから、
あの、狸が結局、魚か何(なん)か持っとったんだしょう。そいで
「お前、じゃあ、どがん「どう」して」取ってきたか」と、言うことで、狐がきいたんですね。
そうしたところが「あつこの保利いたてその、尻尾ばつけっとぎぃ、
どっさい〔たくさん〕かかったい〔捕れたよ〕」と、言うたもんじゃから、
ほんなごと位(ぐり)ゃおもうて、その狐がその、沼に行ってですね、尻尾つけとったんでしょう。
その頃がもう、いちばんその寒の酷いだけでとうとうとその、自分も辛かったけれども
魚が捕れんもんだから、いっぱいお尻をぬまにですね、つけっとたところが、その晩に結局、
氷が張り詰めて、もう尻尾が抜けんごとなったわけですね。
そして、結局まあ、人に盗られたと、いうような話を、ちょっと私ゃ
お爺さんからじゃい〔か〕聞いたことがありますね。
そいけん、同じ騙しよってもですね、お互いに騙しよったから、そいからその、
悪か同士でそいうことになったと。で、悪いことをしてはいかんと
言うようなこと言いよったですね、お爺さんたち。
〔大成 二A 尻尾の魚釣り(AT二)〕
(出典 吉野ヶ里の民話 P8)